ロコモティブシンドロームとは?
健康寿命とは心身ともに自立し、健康的に生活できる期間のことです。
健康寿命を延ばすには、自立度の低下や寝たきり、つまり、要支援・要介護状態にならないための予防が重要になります。
ところで、要支援・要介護の最も大きな要因は運動器の障害です。運動器の障害により、移動機能が低下した状態をロコモティブシンドロームといいます。
現代人は足腰を使う機会が減っているため、子どもからお年寄りまで、全世代の方に注意が必要です。
<ロコチェック>
以下の項目に1つでも該当する方はロコモティブシンドロームが疑われます。当院にご相談ください。
- 片脚立ちで靴下が履けない
- 家の中でつまずいたり、滑ったりする
- 階段を上がるのに、手すりが必要である
- 掃除機かけや布団の上げ下ろしなど、やや負荷のかかる家事が困難である
- 2kg程度(1ℓの牛乳パック2個)の買い物をして、持ち帰ることが困難である
- 続けて15分くらい歩くことができない
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
ロコモティブシンドロームとは
運動器とは骨・関節・軟骨・椎間板・筋肉・靭帯・腱・神経といった身体を動かすために関わる組織や器管のことです。
運動器の障害のために「立つ」「歩く」「走る」「座る」など日常生活に必要な移動機能が低下している状態を“ロコモティブシンドローム”、略して“ロコモ”といいます。
原因
ロコモを引き起こす運動器の障害は、運動器自体の疾患と、加齢や生活習慣によって起こる運動器機能不全があげられます
運動器自体の疾患
変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背、易骨折性、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症など。
関節リウマチなどでは、痛み、関節可動域制限、筋力低下、麻痺、骨折、痙性などにより、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたします。
運動器機能不全
筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度の低下、巧緻性低下、深部感覚低下、バランス能力低下などがあげられます。
閉じこもりで運動不足になると、筋力やバランス能力の低下と相まって、運動機能の低下が起こり、容易に転倒しやすくなります。
診断
身体全体の運動機能と,膝,腰など個々の部位や下肢筋力などの評価を行います。
評価方法は例えば、前述の「ロコチェック」に加えて、より広い年齢層でロコモの危険度を判断する「ロコモ度テスト」があります。
ロコモ度テストとは、①下肢筋力、②歩幅、③身体状態・生活状況を評価するテストです。これらのテスト結果を年齢平均値と比較し、年齢相応の移動能力を維持しているかを判定します。年齢相応の移動能力に達していない場合は、将来ロコモになる危険度が高いと考えられています。
治療
運動習慣を身につけたり、生活習慣を見直したりするなどの対応が必要になります。
痛みがでている場合は、医師による適切な治療が必要です。またリハビリによって運動器機能不全を少しでも改善し、転倒のリスクを下げることが重要です。当院では医師の指示のもと、理学療法士がひとりひとりの患者様の状態に合わせて運動療法を行います。
*「ロコトレ」と呼ばれるトレーニングで運動器の機能改善を図り、ロコモの改善を図ることも効果的です。
ロコトレ
たった2つの運動です。毎日続けましょう。
(1)片脚立ち
バランス能力をつけるトレーニングです。
左右1分間ずつ、1日3回行いましょう。
①姿勢を真っ直ぐにします。
②床につかない程度に片脚を上げます。
※転倒しないように注意し、支えが必要な人は机に手や指をついて行ってください。
(2)スクワット
下肢の筋力をつけるトレーニングです。
深呼吸するペースで5~6回繰り返します。毎日3セット行いましょう。
①肩幅より少し広めに足を広げて立ちます。つま先は30度に開きましょう。
②膝はつま先より前に出ないように、また、膝が足の人差し指の方向を向くように注意して、お尻を後ろに引くように身体を沈めます。膝に負担をかけすぎないために、膝は90度以上曲げないようにします。
※スクワットが難しい方は、椅子に腰かけ、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返します。
予防
ロコモの予防には、症状の早期発見、毎日の運動習慣とバランスの良い食生活が重要です。
症状の早期発見
運動器の機能は加齢や環境変化の影響を受けます。定期的にチェックを行って、自分の状態を把握し、気になる症状がある場合は早めに受診しましょう。
ご自身でもできる「ロコチェック」が役立ちます。
毎日の運動習慣
進行を予防するための運動習慣をできるだけ早い時期からスタートさせることが大切です。
「ロコトレ」が役立ちます。
バランスの良い食生活
運動習慣と栄養のバランスの取れた食生活で、骨や筋肉を強くすることが重要です。
肥満ややせすぎも要注意になります。肥満になると体重が増えた分で膝や腰に負担がかかりロコモの原因になります。一方で、過度のダイエットなどによる栄養不足も、骨や筋肉量が減少し、運動器に悪影響を与えるため、ロコモの原因になると考えられています。